キャリア官僚になる東大生が減っているそうです。
2020年度の国家公務員総合職(キャリア)試験合格者の1717人中、東大卒は249人(昨年)
合格者に占める割合は14.5%. 2010年は32.5%だったことを考えるとここ10年で半減しています。
1.東京大 249(307)
2.京都大 131(126)
3.早稲田 90(97)
4.北海道 69(81)
5.東北大 65(75)
6.中央大 60(59)
7.立命館 59(33)
8.岡山大 56(55)
9.東工大 51(33)
名古屋 51(30)
依然Top10の中では飛び抜けていますが、他大学が微減もしくは増えていく中で、東大生だけが急激にその数を減らしています。
国家のために滅私で奉公する『官僚たちの夏』(城山三郎著)はもはや過去の話。
価値観が多様化し、ワークライフバランスや、経済的成功者との経済格差が拡大する状況下において、東大まで出て官僚になることの意義や旨味がなくなってきているのでしょうか。
キャリア官僚へ道

そもそも、キャリア官僚になる東大生の人生は、受験競争の中で常に勝ち抜いてきたもの
生まれ持った素質もさることながら、努力を重ねないとなかなか到達できる道ではないです
小学生3年生頃:中学受験の準備を始め、常にトップの成績で、開成、灘、筑駒、麻布などの超難関校に入学
中学1年生:中高一貫校に入学したら中一から東大受験専門の塾である鉄緑会に6年間通う
高校3年生:東大受験の倍率は、3倍程度だが、全国のトップ層の中で勝ち抜く
大学4年生:キャリア官僚なるための試験(国家公務員採用総合職試験)の倍率は10倍以上
キャリア官僚になるまでにかかったコスト
東大を卒業し、キャリア官僚になるためにかかるコストの概算はざっと以下のメージ:
- 中学受験塾 4-6年生の3年間で300-400万円
- 鉄緑会などの学習塾費:6年間総額:200-300万程度
- 私立中高一貫校学費6年間:800-1000万程度
- 東大4年間の学費:250-300万
あくまで概算ですが、小学生から大学卒業までに2000万程度は必要になっています。
東大ではなくとも、かかる費用は似たような状況でしょうし、むしろ私立大学だとさらに高い。
少なくともこの金額を払える親の経済力が無ければ、官僚になるのもなかなか険しい道です
キャリア官僚の年収
そうまでして到達したキャリア官僚の収入はというと、公務員の規定に準じて支給されます:
- 入省時の新人で約350万円
- 30代課長補佐で約750万
- 40歳の課長クラスで約1000万となっています。
- 省庁のトップ、事務次官(キャリア官僚の頂点)の年収は約2300万円。
金銭的な側面からみれば、民間に比べて特別高給というわけではありません。
ちなみに日本で給与の高い企業で知られるキーエンスは、平均年収は1800万前後。
また人気企業のgoogleは平均年齢30歳、平均年収は1400万程度。
30代で750万のキャリア官僚は、そこに到達するまでの努力、かかったコストを考えると給与の面では割りに合わないですよね
若手キャリア官僚の職場環境
若手キャリア官僚の職場環境は、極めて過酷で労働時間が非常に長いのに年収が低いことが指摘されています
月の平均残業時間が150時間。国会会期中は答弁作成のため200時間を超えることもある。肉体的にも精神的にも常に疲弊し、通勤の満員電車で立ったまま気絶したように眠る
霞が関の中央省庁で課長補佐を務める30代のキャリア官僚談
さらに、事あるごとに不祥事で国民からバッシングされるうえ、最近では天下りも難しくなっています
キャリア官僚のやりがいと苦悩

日本を動かす仕事
キャリア官僚が働く中央省庁はまぎれもなく日本を動かしている組織
- 各種法律案を考える
- 国家予算を立案
- 国家プロジェクトのメンバーになる。その規模は何十億、何百億というレベル
まさに日本の行く末を左右する案件に多く関わるため、ほかの職業とは違うやりがいもあるでしょう
また、自分が携わった仕事の成果として、日本国民全員の生活に大きな影響を与える制度が後世にも引き継がれることを考えると、使命感と責任感も計り知れないほど大きいでしょう。
過酷な仕事
一方で、時の政権の方針に翻弄されたり、野党のパフォーマンスに付き合わされたりとその業務が国民の生活に関係ないことに多くの時間を割かれるのも事実
- 国会会期中は答弁作成のために延々と続く残業
- 与野党の政治的攻防に巻き込まれ翻弄される
- 官僚も不祥事があったときだけクローズアップされてしまう
こういったこともあり、世間からはあまりいい印象を持たれていないかもしれません
そりゃ、低賃金(東大生同期が就職するような大企業との比較の意味)でここまで働かされたら、天下りの一つや接待だって受けたくなりますよ。
優秀な官僚を生かさないと日本に未来はない
日本の官僚は優秀です。
しかし、その制度設計がもはや時代に即していなく、日本の最高峰の頭脳集団が生かしきれていないと思います。
個人的には、年収なんて新入社員の時から1000万円くらいにしても良いと思う。それだけのレベルの仕事を彼らは担っています。
その代わり、彼らは幼い頃から受験勉強に勝ち続け、そのまま一般的な社会経験なしに権限を持つ立場になります。裕福な家庭で育った人も多く、経済的困窮の生活など、知識としては理解していても実感は湧かないでしょう。
なので、最初の1−2年は、大企業や中小企業などを経験することを取り入れ、国民の目線や一般的な人々の考え方を学ぶ機会を作るべきだと思います。
待遇を改善し、そして真の国民目線を理解する機会を作る。そこに最高の頭脳と国をリードする熱い想いが加われば、その時こそ、最強のキャリア官僚が日本を支えていくのではないでしょうか?
正直、政治家は、東京都知事みたいにパフォーマンスばかりにご執心なので、官僚たちの活躍に私は期待しています。